●社会起業家としての若杉典加さん
お父さんは建築の世界で経営をし、お母さんは自然食品店を経営していた。そうしたなかで育ったせいか、典加さんには「経営」という天与の才が与えられているように感じるのは筆者だけではないだろう。その才能をさらに開花させたと思うのは、「きらり上林」の存在だ。
2年前からは、母の友子さんに協力を依頼 (活用 笑)し、野草や穀物菜食の料理教室を開催、人気のプログラムをつくっていった。昨年は、閉校となった奥上林小学校近くの約2ヘクタールの耕作放棄地を復活、活用して育てた地元米「きらり上林」を誕生させた。自然豊かな地で、清流で育ったお米を通し、この地の魅力の発信をおこなう。京都府の地域力再生の支援で袋やパッケージもこだわった。地域ブランドづくりを確実に成功に導いている。
典加さんは府の広報紙で「きらり上林」米をこんなふうに熱くPRする。
私達は長年荒れていた農地2haを復活させ、上林の自然をできるだけ傷つけずに、人と地球に優しい無農薬・超低農薬で育ったお米を「きらり上林米」として販売しています。従来のお米は低農薬と言っても殺菌剤、殺虫剤・田んぼや畦に除草剤を数回撒いています。私達は無農薬にできるだけ近い超低農薬のお米づくりにこだわり、期間中の消毒・化学肥料は使用せず、田植え直後の除草剤を1回のみ使用だけですので、安心して召し上がっていただける、イチオシのお米です !
アイデアもどんどん生まれ、人を巻き込み、なんといっても行動力に長ける典加さん。自分が住むまちや村の魅力に気づき、宝物を発掘し、そこを舞台に、「好きなこと×得意なこと×大事だと思うこと」など、天与の才を活かし、みんなとコラボレーションしていくことが大事だと筆者は思っているのだが、典加さんはまさにそんな人である。移住した綾部の上林地域をこよなく愛し、あますところなく、自分を活かしきる。それが典加さんだ。もし、綾部ではなく、朽木村に彼女が行っていたらどうだっただろう。そんなことは恐ろしくて考えられない。そう思うのはほんとうにぼくだけではないはずだ。
典加さんはWWOOFer(ウーファー※)を受け入れたりもしてきた。若杉さん親子に惹かれる食について学びに来る人、田舎暮らしをしたい人、農業を始めたい人、綾部に関心を持つ人らがどんどん綾部を旅してくれている。そのなかでまたいろいろな物語が綾部の地で、上林の地で生まれていっている。上林は神林。そういう人もいる。きっとこの地は人をひきつけるものが眠っている特別な地なのだろう。その地に舞い降りた典加さん。彼女のことをこれからは「社会起業家」として見るべきだと思っている。これからもますます目が離せない。
(※WWOOFとはWilling Workers On Organic Farms の略、オーガニックファームで働きたい人に、「労働」と「住まいと食事」を交換する国際的なしくみ。それをする人をウーファーと呼ぶ)
文・塩見直紀